人工透析とは
腎不全の末期症状において、低下した腎機能の代わりの役割を果たすのが、透析療法です。
腎臓病を発症すると、腎臓の働きが次第に低下して、体内の老廃物や、余分な水分を排泄できなくなり、体に尿毒素がたまって、いろいろな症状(尿が減ってむくみが出たり、呼吸が苦しくなる、尿が出にくい、食欲の低下など)が現れてきます。そこで、腎臓の働きを補うために、透析療法が必要となります。
【人工透析内科に関するコンテンツ】
▼腎臓とは
腎臓は、背中側の腰の高さに左右1個ずつある臓器(こぶし大の大きさ)で、血液中の老廃物をろ過して尿をつくる、からだの「排水処理場」です。
腎臓には、心臓が1回の拍動で送り出す血液の4分の1が送りこまれ、約150~180リットルもの尿のもと(原尿)がつくられ、ろ過が繰り返されます。そうして最終的に約1.5リットルまで減って尿として排出されます。
【腎臓のおもなはたらき】
- 尿をつくりだす
- 血圧を調整する(血圧を上げる物質と下げる物質の両方をつくりだす)
- 赤血球をつくる
- カルシウムの吸収を増加させるビタミンD3を活性化する
など
▼腎不全とは
さまざまな原因により、腎臓の働きが不十分になった状態を腎不全といいます。
腎不全には、急激に腎機能が低下する急性腎不全と、長年にわたって徐々に機能が低下する慢性腎不全の2種類があります。
急性腎不全は、早急に適切な治療を行うことで大部分の機能回復が見込めますが、慢性腎不全は腎機能がある程度まで低下しないと自覚症状が現れず、早期発見が大変難しい病気です。
そのため、一度失った腎機能の回復は困難です。
腎臓の働きが低下すると、本来尿として出るべき老廃物が体に溜たまります。
症状は、進行速度や重症度、原因によってさまざまですが、尿の異常、部分的なむくみや高血圧になることもあります。慢性腎不全の末期状態になると、「尿毒症」となり、重とくな場合、全身けいれんなどの症状が現れます。
末期の治療法は、腎移殖か透析療法に限られてきます。
▼人工透析とは
透析(とうせき)、人工透析(じんこうとうせき)とは、腎臓の機能を人工的に代替するという、医療行為のひとつです。
腎不全になって腎臓の働きが10%以下になると、血液のろ過が充分に行えず、水分や老廃物のコントロールができなくなってしまいます。
そのような場合に、人工的に血液の浄化を行うのが、透析療法なのです。
腎不全に陥った方が尿毒症になるのを防止するには、外的な手段で血液の「老廃物除去」「電解質維持」「水分量維持」を行わなければいけません。
この治療を透析と呼び、人工腎、血液浄化と呼ばれることもあります。
(この場合の血液浄化は疑似科学で用いられる用語とは違います)
血液透析が発明されたことで、 腎臓の働きが0になっても寿命を全うすることができるようになりました。
現在全国で約20万人が透析療法を受けています。
透析療法には血液透析療法 (Hemodialysis:HD)、自分のお腹の腹膜を使って行う腹膜透析療法(Peritoneal Dialysis:PD)、人工的に行う血液透析濾過療法 (Hemodiafiltration:HDF)、持続的血液透析濾過療法(continuous hemodiafiltration:CHDF)、血液濾過 (Hemofiltration:HF)、アフェレーシス(apheresis)等の種類があります。
▼血液透析とは
血液透析療法 (Hemodialysis:HD)
血液透析は、血液透析器(ダイアライザー)を通して血液を体内から取り出し、人工腎臓(血液透析器=ダイアライザー)を通して老廃物や過剰な水分を取り除き、浄化された血液を体内に戻す方法です。
血液を体外に取り出すために、腕の静脈と動脈をつなぎ合わせる手術が必要です。
腕の血管(バスキュラーアクセス/シャント)に針を刺し血液ポンプを使って 血液を体の外に取り出します、その血液をダイアライザー(透析器)に循環させ て尿毒素を排除した後、体に戻します。
ダイアライザーとは細い管状の透析膜 (直径約0.2mm)を無数に束ねたもので管の中を血液が流れ、その周囲 には透析液が流れています。
透析膜の小さな穴を通して老廃物や水分、 塩分などが透析液の側に移動します。
こうして不要なものを除去し浄化された血液は体に戻ります。
血液透析(HD)の注意点
- 低血圧:水分や老廃物が急激に除去されると、血圧が低下し、めまい、発汗、吐き気などを起こすことがあります。
- 悪心:治療中および治療後の血圧の変化などによって、悪心を生じることがあります。
- 痙攣(けいれん):透析中、急激な水分除去によって、筋肉の痙攣が起こることがあります。
- 頭痛:透析の終わり近くに頭痛がすることがあります。これは血液中の水分や老廃物の変化によるものです。
- 疲労感:疲労感血液透析(HD)後に疲労感を感じることは珍しくありません。たいてい翌日までには回復します。
▼腹膜透析とは
腹膜透析療法(Peritoneal Dialysis:PD)
腹膜透析とは、お腹の中(腹腔内)にカテーテルを植え込む手術をし、そのカテーテルを通して、お腹の中(腹腔内、透析液を入れておく事によって体の中にいらなくなった毒素や余分な水が、腹膜の血管を通して透析液に出るというしくみです。自宅や職場で透析液の交換をご自身で行います。
血液透析では血液を体外に取り出して血液の浄化を行いますが、腹膜透析では 下の図のように直接透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して 血中の尿毒素、水分や塩分を透析液に移動させます。十分に移動した時点で、 透析液を体外に取り出すことにより血液浄化が行われます。
尿がほとんど出ない無尿の腎不全の場合でも、当院の人工透析療法で30年以上も元気に仕事をつづけている方々がたくさんいらっしゃいます。医師の指示に従い、食事などの自己管理に気をつけながら、社会生活を送りましょう。
▼血液透析濾過療法とは
血液透析濾過療法 (Hemodiafiltration:HDF)
HDFは通常透析+血液濾過を合わせた治療法で、腎臓の役目をする透析膜も高性能膜を使用することが可能であり、より多くの老廃物の除去が可能な治療法です。
このHDFはオフライン方式とオンライン方式に分かれ、それぞれオフラインHDF、オンラインHDFと呼ばれています。その違いは、主に老廃物をろ過するための補充液の量に違いがあり、当院では血液からより多くの老廃物の除去が可能なオンラインHDFを採用しています。
補充液の量はオフラインHDFでは、8L~10Lの補充液を点滴で透析回路内へ注入しますが、オンラインHDFでは 24L~48L又はそれ以上の補充液を透析室内の機械室で無菌状態の超純粋の補充液を精製し、治療装置に直接接続し血液中に補充しています。
そのため、きれいな透析液や補充液を精製することが絶対条件であり、厳しい水質管理を実施し毎月必ず細菌等が混入していないかの検査を行っています。この治療方法で従来の透析より、患者様のより良い結果が多く報告されています。
HDFの利点
- 食欲の増進:
体の内部環境の改善により、食欲が出てきます。
- 日常生活での血圧の安定:
降圧剤を減量できる方もいます。
- 治療中の血圧の安定:
補充液を6L/時間~12L/時間補充しながらの治療の為、血圧の低下が起き難くなります。
- 貧血の改善:
増血剤を減量できる方もいます。
- 通常透析では取りきれない老廃物の除去:
β2マイクログロブリン等の透析アミロイドーシスの原因になる物質の除去やその他の小分子蛋白の除去により合併症の予防になります。
- 心臓への負担の軽減:
補充液を注入しながらの治療により、循環血液量の減少予防になり血圧の低い方に有効といわれています。
- 排尿機能の延長
など
▼持続的血液透析濾過療法とは
(continuous hemodiafiltration:CHDF)
急性腎不全の重症例や全身状態の悪い症例に対して行われる血液浄化法である。HDFを24時間持続的に行うということである。
患者を長期拘束をし、長時間の抗凝固薬の投与による出血のリスク、ICU管理となることが多いので面会の制限などがあるものの、少量ずつ透析を持続的に行うため、全身状態に与える影響が少なく、血管外物質の除去効率が高いというメリットがある。