2014年に約70年ぶりの国内感染が報告されたデング熱ですが、シンガポールでは例年よりも異常に早いデング熱の流行が始まったと報じられております。
シンガポールで確認されたデング熱の症例は、2021年の年間症例が5,258例に対して2022年は既に11,000例を超えております。気候変動の影響から、専門家は今後このような感染症の流行頻度は増加していくことになると危惧しているようです。
ここでは夏から秋にかけて警戒しておきたいデング熱について説明しております。
デング熱は、デングウイルスを持った蚊(ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ)に刺されることで感染するウイルス性の熱性・発疹性疾患です。
デング熱の国内感染症例は、年間で約200例以上の報告があります。デングウイルスを媒介する蚊が生息する地域は、主に熱帯・亜熱帯になりますが、相次ぐ気候変動の影響により世界各国で広がりを見せております。
頓服薬とは、症状や発作などがひどい場合に使用する薬のことを指します。
デングウイルスを媒介しているヒトスジシマカは、ヤブ蚊とも呼ばれており古くから日本にも生息している蚊になります。感染源は蚊でありヒトからヒトへの感染はありません。
日本の国内感染例では、8月上旬に最初の発症者が現れ9月上旬までピークが続き、10月末には収束しております。
一般的には2~15日(多くは3~7日)の潜伏期間があり、その後高熱(38~40℃)を発症します。デング熱は感染しても発症しない人がいるなど症状にも個人差があります。
他の症状としては、頭痛・眼窩痛・関節痛・筋肉痛・全身の発しんなどがあります。多くの場合は一週間程度で回復しますが、稀なケースとして重篤な症状(出血やショック症候群)になると死亡する場合もあります。
検査には「NS1」というデングウイルス特有の抗原を保持しているかをチェックします。その他血液中にウイルスの抗体があるかもチェックします。近くに検査ができる施設がない場合は、地方衛生研究所や国立感染症研究所にて検査を依頼することもできます。
デングウイルスに直接働きかける治療方法はなく、長くても2週間程度で回復することもあり、それぞれの症状を和らげる方法が一般的な治療方法となっております。
40℃近い高熱や呼吸困難、出血など重い症状の場合は重症化する可能性が高いため、すぐに専門医へ相談してください。
また、デング熱は血小板が減少して出血を起こしやすくなるため、血小板に影響する解熱鎮痛薬(アスピリンなど)を使用することができません。
デングウイルスを予防するための市場化されたワクチンはありません。ワクチンがない理由としては、デング熱がヒトのみに作用するため臨床試験を進められないことや、過去に認められたワクチンをデングウイルスに感染したことがない人にワクチン接種した場合、デングウイルス感染後により重症化するリスクが高まることがあったからです。
現状での予防としては蚊に刺されないようにすることですが、全ての蚊がデングウイルスを持っているわけではありません。蚊に刺されたことが原因で発熱などの症状が見られた場合には、医療機関を受診するようにしましょう。
国外でのデング熱流行の報道はあるものの、デング熱の主たる媒介蚊のネッタイシマカは日本に常在していないため、過分に心配する必要はないと言います。ただしヒトスジシマカもデングウイルスを媒介することができるため、日本人帰国者ないしは外国人旅行者が感染した際に、蚊からデングウイルスを伝播する可能性は低いながらもあり得ます。
デング熱を疑うような症状がある場合には、渡航歴の有無にかかわらず検査を行うようにしましょう。