内視鏡検査とは、先端に小型カメラ (CCD) またはレンズを内蔵した太さ1cm程の細長い管を口あるいは肛門より挿入し、食道、胃、十二指腸や大腸の内部を観察し、時には治療を行うものです。医療機器や技術の発達により応用範囲も広がり、診断から治療までスムーズに行われるようになってきました。
【上部内視鏡検査(胃カメラ)をした方がいい症状】
【下部内視鏡検査(大腸カメラ)をした方がいい症状】
食道疾患 | 逆流性食道炎、食道がん |
胃疾患 | 胃炎、胃潰瘍、胃ポリープ、胃がん、ピロリ菌 |
腸疾患 | 大腸炎、炎症性腸疾患、大腸ポリープ、大腸がん |
肝疾患 | ウイルス性肝炎、肝硬変、脂肪性肝疾患、自己免疫性肝疾患、肝がん |
胆道疾患 | 胆石、総胆管結石、胆のう炎、胆管炎、各種胆道系腫よう疾患(ポリープ、がん等) |
膵疾患 | 急性膵炎、慢性膵炎、各腫よう疾患(充実性腫よう、膿胞性腫よう) |
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厚生労働省 人口動態調査が発表(2015年6月6日発表)
上部消化管とは食道・胃・十二指腸を指し、口または鼻から内視鏡を挿入し、これらの部位を一連の検査で観察します。昔から「胃カメラ」と言われてきたものです。
一般検査〔経口内視鏡(口から入れる内視鏡)、経鼻内視鏡(鼻から入れる内視鏡)など〕と特殊検査・治療(内視鏡的切除術、超音波内視鏡など)に分かれます。
近年胃癌の原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染が注目されています。
ピロリ菌は、胃炎や胃潰瘍、さらに胃癌になるリスクを高めます。
2013年より、ピロリ感染した慢性胃炎も保険診療が可能になりました。以前から胃や十二指腸に潰瘍がある、慢性の胃炎がある、胃のあたりがすっきりしない方は胃の内視鏡検査をおすすめします。
【経口内視鏡】
【経鼻内視鏡】
【経鼻内視鏡のメリット】
苦痛が少ない | 内視鏡は、鼻にスムーズに挿入できる、直径約5mmの細さです。体への負担も少なく、強い麻酔の必要もありません。 |
吐き気が起きにくい | 内視鏡が舌のつけ根を通らないので、不快感や吐き気をほとんど感じずに検査を受けることができます。 |
会話ができる | 検査中に自分の胃の映像の映ったモニターを見ることも会話をすることもできるので、映像を見ながら説明を受けたり質問をすることが可能です。 |
きめ細かい検査が可能 | 検査時間中の患者さんの苦痛が少ないため、「見落としやすい初期の癌」、「胃炎と判別がつきにくい癌」などを、直接粘膜を見ながらじっくりと、詳細に検査を実施することが可能です。 |
【経鼻内視鏡のデメリット】
鼻腔の苦痛・違和感がある | アレルギー性鼻炎でためらわれる方もおりますが、ほとんどの方は前処置を十分に行うことで問題なくできます。しかし一部の方では鼻腔の変形が強いなどで、苦痛を感じたりスコープが鼻腔を通過できない方がいます。 その場合はもう一方の鼻腔や口から行うよう切り替えます。 |
鼻出血がある | 狭い鼻腔内を通過する為一定の割合で鼻出血は起こります。 通常数分間押さえるだけで止まります。 |
解像度がやや劣る | 経口用スコープ(オリンパス GIF-H260)に比べて解像度が落ちます。これはハイビジョン仕様である経口用スコープが高性能であるということであって、通常の観察では経鼻用スコープでも十分な性能を有していると考えています。 |
観察範囲が狭い・暗い | 経鼻用スコープは経口用に比べて観察できる範囲がやや狭い傾向があり、見えていても組織を取りにくい場所があります。 |
時間がかかる | 経鼻用スコープは送水・吸引の穴が細く検査の時間がやや伸びます。しかし苦痛が少なく会話をしながら検査ができるという経鼻内視鏡ならではの利点により、むしろ時間が気にならないことが多いようです。 |
大腸カメラは、癌になる前の大腸ポリープ、大腸癌、炎症を調べるために行います。
大腸カメラは太さ11-13mm程度の細長く軟らかい内視鏡です。見た目としては、胃カメラよりもやや太くて長い形です。
肛門から盲腸まで(内視鏡が約70〜80cm入ります)の大腸内を挿入・観察するために太さや硬さや形状などが最適化されています。
検査前に便を完全に排出させるために下剤(腸管洗浄液)を2リットル近くのみます。
大腸は非常に長く(伸ばすと150cmぐらい)曲がりくねっているため、内視鏡が奥に進んで行く際に一時的に腸が押されて伸ばされることがあり、その時に腹が張ったり痛くなったりすることがあります。
その苦痛を軽減するために「腸に負担の少ない内視鏡機器と挿入法」「腸が伸びないようにおなかを押さえる介助法」「鎮痛剤・鎮静剤の使用によりリラックスし苦痛を感じにくくする」などの工夫がなされ、以前よりも苦痛の少ない検査が可能となっています。
盲腸まで内視鏡が挿入された後に、内視鏡を抜きながら再び肛門まで戻りながら大腸を詳細に観察します。
ポリープなどの病変を発見した時は、必要に応じて特殊光観察・色素散布・生検組織採取・切除術などを行います。
大腸カメラで苦痛に感じる原因は2つあります。
【内視鏡による腸の圧迫】
日本人の大腸の平均的な長さは1.5〜2mです。腸はところどころ曲がりくねっており、曲がり角を通過する際、スコープで腸を圧迫すると、痛みを感じます。施行経験の多い医師に見てもらうと痛みが軽減されるかもしれません。
【腸内に入れた空気によるお腹の張り】
腸内を検査するためには、空気を入れることで観察に必要な空間を確保する必要があります。
この空気がなかなか抜けず、お腹が張ることで痛みを感じることがあります。空気ではなく、腸に高速吸収されやすい炭酸ガスを用いる病院であれば、施術後のお腹の張りは軽減されます。
小腸は長いため、これまで長い間内視鏡で観察することは困難でしたが、この頃は「カプセル内視鏡」や「バルーン内視鏡」、「プッシュ式小腸内視鏡」の登場により、小腸すべてを観察することが可能となりました。
これらの検査を行っているかどうかを事前に病院にお問い合わせください。
薬のカプセルよりも少し大きなカプセル内視鏡(長さ26mm、幅11mm)を飲んだのち、カプセルが消化管の動きによって徐々に進みながら、1秒間に2枚ずつ撮影していきます。
7〜8時間にわたり計5万〜5万5000枚の画像を撮影し、腰に取り付けたレコーダーに記録します。
これをあとでコンピューターで動画として解析します。患者さんの負担が少なく、小腸全体を観察することができますが、食道や胃、大腸は十分に観察することはできません。小腸にたまっている内容物の影響や、撮影時間に限りがあるため、小腸の奥のほうを観察できないこともあります。
また、組織検査のため一部をとったり、治療することはできません。
バルーン内視鏡とは、長さ2mの長いスコープとバルーンの付いたオーバーチューブを組み合わせたものです。バルーンを膨らませたりへこましたりしながら、オーバーチューブとスコープを進めたり引いたりすることにより、長い小腸を折りたたむように縮めながら奥へ進んでいきます。
この方法の開発により、小腸全体を内視鏡観察することができるようになりました。
バルーンのついていないスコープを用いて、上部消化管内視鏡検査と同様に経口的にすすめることにより小腸に内視鏡を挿入する方法です。
観察できる距離は長くはありませんが、手技が容易で、検査時間も短くなっています。
胆嚢、胆管あるいは膵臓の病気を診断するために、口から内視鏡を挿入し行う検査です。
胆・膵内視鏡検査には内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)、超音波内視鏡検査(EUS)のような検査法がありますが、病変の部位、種類、黄疸の状態などによりさらに高度医療機器を駆使した検査方法もあります。
超音波内視鏡以外は原則として入院を必要とします。
胆嚢、胆管あるいは膵臓の病気を診断するために、口から十二指腸へ内視鏡を入れ、そこから胆管や膵管の中に選択的に細いチューブを挿入して、造影剤を注入し、レントゲン撮影を行う検査です。
まれに急性膵炎を生じることがあります。
内視鏡下に電気メスで十二指腸の胆汁排出口(ファーター乳頭)を切開する方法を内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)といい、内視鏡下に風船(バルーン)を使用してファーター乳頭開口部を拡張する方法を内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPPD)といいます。
これらの検査は、胆道が閉塞して起こる黄疸を軽減したり、総胆管結石の治療時に施行されます。
全身麻酔の必要はなく、比較的安全に行われていますが、合併症として出血、穿孔、胆管炎、急性膵炎などがあり得ます。したがって入院して施行するのが原則です。
先端に超音波振動子がついた内視鏡を口から胃・十二指腸に挿入し、胆嚢,胆管,膵臓を観察するものです。体外式の超音波検査ではよく観察できない場所や、病変のより鮮明な画像を得るために行います。胆嚢ポリープ、胆管ポリープ、総胆管結石、胆管腫瘍,膵嚢胞、膵腫瘍などが良い適応になります。
近年細径超音波プローブが開発され(管腔内超音波検査)、プローブを胆管内、膵管内に直接挿入し、そこから病変の超音波画像を得ることもでき、必要と考えられた疾患において行います。