食中毒と言えば、暖かい時季に発生するイメージがあるかもしれませんが、実際は、事件数・患者数ともに寒い冬の時季に多く発生しております。
特に感染力の強いノロウイルスによる食中毒が、冬場に多く発生しております。
食中毒の原因となる細菌や、食中毒を起こさないための予防など、クイズを通して知識を身につけていただきたいと思います。
食中毒は、起こすもととなる細菌やウイルス・有毒な物質がついた食べ物を摂取することで下痢・腹痛・発熱・吐き気などの症状が出る病気です。
食中毒の症状は数日から2週間程度続くと言われております。特に小児や高齢者の場合は下痢や嘔吐が長時間続いてしまうと、深刻な状態へ進行する場合もあり死に至ることもあります。
また、症状を和らげる薬を服用することで一旦症状が回復することもありますが、体内で増殖した細菌やウイルスが排出されず、長期間腸内で留まることで症状が長期化することに繋がります。
そのため、食中毒の場合には必ず医療機関を受診するようにして下さい。
食中毒の主な原因は細菌とウイルスです。
細菌は、温度や湿度などの条件が揃うと食べ物の中で増殖します。細菌が増殖した食べ物を摂取してしまうことで、食中毒を引き起こします。
ウイルスは、低温や乾燥した環境中で長く生存します。細菌のように食べ物の中では増殖しませんが、ウイルスの付着した手を通じて感染したり、ウイルスを含んだ粒子を吸入して感染したりします。
細菌が原因となる食中毒は夏場(6月〜8月)に多く発生し、ウイルスが原因となる食中毒は冬場(11月〜3月)に多く発生しております。
また乳児ボツリヌス症という食中毒がありますが、ハチミツを食べることで発症することがあります。
ボツリヌス菌は土壌細菌であり、芽胞による汚染の可能性があるハチミツや井戸水は、腸内環境が整う時期(離乳食ができる頃)まで乳児に与えないように注意してください。
その他、毒キノコやフグなどの自然毒に加え、アニサキスなどの寄生虫なども食中毒の原因となっております。
食中毒の原因となる病因物質は、次のように分類されます。
食中毒 | 細菌性食中毒 | 感染型 | サルモネラ属菌・腸炎ビブリオ・病原大腸菌・ウェルシュ菌・エルシニア-エンテロコリチカ・カンピロバクター(ジェジュニ / コリ) など |
毒素型 | 黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌・セレウス菌(嘔吐型) など | ||
ウイルス性食中毒 | ノロウイルス・A型肝炎ウイルス など | ||
寄生虫食中毒 | クドア・サルコシスティス・アニサキス・クリプトスポリジウム・サイクロスポラ など | ||
化学性食中毒 | 水銀・ヒ素・ヒスタミン など | ||
自然毒食中毒 | 動物性 | フグ毒・貝毒 など | |
植物性 | 毒キノコ・ジャガイモの芽 など |
細菌性食中毒は、食中毒菌に汚染された食品を食べることで発症します。さらに細菌性食中毒は感染型と毒素型に分類されます。
感染型は食べ物の中で増殖した原因菌を摂取し、腸管内で感染することで発症します。
毒素型は食べ物の中の原因菌が増殖する際に毒素を産生し、その毒素を摂取してしまうことで発症します。
厚生労働省の食中毒統計では、ウイルス性食中毒のほとんどがノロウイルスによるものです。
ノロウイルスは食中毒と感染症の両方を引き起こす危険なウイルスです。体内に入り感染した場合には、腸の中で増殖し嘔吐や下痢、腹痛などを引き起こします。
ノロウイルスに感染した人の手やくしゃみ、嘔吐物などを介して二次感染するケースもあります。
近年、寄生虫による食中毒が増加の傾向にあり、特にアニサキスによる食中毒が著しく増加しております。
アニサキスはアジやイワシ、イカなどの魚介類に寄生します。寄生している魚介類を生で食べることで、アニサキスが胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こします。
魚を購入する際は新鮮な魚を選ぶだけでなく、内臓がある場合には速やかに取り除いてください。
化学性食中毒は、食品あるいは食品原料に本来含まれていない有害化学物質を摂取することで発症します。
重金属やカビ毒による汚染、有害食品添加物の混入、変敗に伴う油脂酸化物の生成、ヒスタミン生成菌によるヒスタミンの蓄積などが原因です。
細菌性食中毒に比べて発生率は少ないものの、発生すると大規模な事件に至ることが多いです。
自然毒は動物や植物が元々保有、または食物連鎖を通して動物の体内に取り込まれた有毒成分です。
食材自体が持つ微量の毒成分や、ある成分を大量に食べることで健康被害が起きる場合があります。
自然毒食中毒は動物性自然毒と植物性自然毒に大別されます。
動物性自然毒は主に魚介類によるもので、殆どの毒物質はプランクトン(有毒渦鞭毛藻)類に由来します。
植物性自然毒は主にキノコによるものです。キノコ以外では、トリカブトやジャガイモ、青梅などがあります。下痢程度の症状で済む場合もありますが、中には致死性の高いものもあります。
食中毒を防ぐには、原因となる細菌やウイルスを体内に入れないことです。
細菌性食中毒の場合は、食べ物に細菌をつけない、食べ物に付着した細菌をふやさない、食べ物や調理器具に付着した細菌をやっつける、という3原則を守ることが大切です。
■ 細菌性食中毒予防
つけない:食品に菌をつけないよう清潔を心がける
ふやさない:食品についた菌をふやさないよう迅速な調理・提供と冷却を心がける
やっつける:食品の中心部が75℃で1分以上加熱する
※加熱しても死滅しない特殊な細菌もおります
ウイルス性食中毒の場合は食べ物の中で増殖しないため、ウイルスを食べ物につけないことと食べ物や調理器具に付着したウイルスをやっつけることが大切です。
■ ウイルス性食中毒予防
つけない:食品にウイルスをつけないよう清潔を心がける
やっつける:食品は85〜90℃で90秒以上加熱する
細菌やウイルスは目視することができません。手からの感染を減らすためには、薬品による殺菌だけでなく手洗いによる除菌に気を配る方が効果的です。
次のようなときは、必ず手を洗いましょう。
また清潔にしているキッチンでも、食中毒の原因となる細菌やウイルスが全くいないとは限りません。
キッチンは、家庭の中でトイレやお風呂場よりも多くの細菌やウイルスがいる場所とも言われております。
特に食器用スポンジやふきん・まな板などは、細菌が付着・増殖したりウイルスが付着しやすい場所です。食中毒に対する知識をしっかりと身につけ、効果の高い予防対策を行うことが大切です。