日常生活において、人間が活動するうえで欠かすことのできないのが睡眠です。睡眠不足や睡眠の質の悪化は、生活習慣病のリスクになるだけでなく、不眠が原因で心の病になることも分かってきました。
ここでは不眠症(睡眠障害)の疑いがあるときに何科を受診すればよいのか、不眠を解消する方法を説明しています。
▼ 不眠症(睡眠障害)とは?
不眠症(睡眠障害)は寝つきが悪かったり、途中で目が覚めたり、早朝に目が覚めてしまったりする症状のことを指します。
日本では、約 5人に1人が不眠の症状で悩んでいるとされております。不眠症は、若い頃には稀な症状ですが、成人してから加齢とともに増加しており、中年から老年ともなると患者数が急増します。また男性よりも女性に多いと言われております。
睡眠が大事な理由
睡眠には、脳や身体の休養・疲労回復・免疫機能の増加・記憶の固定・感情整理など多くの重要な役割があります。
睡眠は身心の疲労を回復するだけでなく、記憶の整理と学習の強化、脳を回復させることにも必要なことです。十分な睡眠が取れない場合には、生活習慣病のリスクを増加させる可能性があり、うつ病などの心の病につながることも分かってきました。
記憶や学習力を向上させたり、免疫機能を強化したりするためにも、良質な睡眠が不可欠です。
睡眠を阻害する主な原因
睡眠を阻害する原因として一般的には以下の通りです。
1.ストレスや不安 | |
日常生活のストレス、悩みや緊張が睡眠に影響を与えることがあります。 |
2.不規則な生活習慣 | |
睡眠の時間やパターンが不規則な場合、体内時計が乱れて睡眠障害を引き起こすことがあります。 |
3.過度の刺激 | |
テレビやゲームで興奮状態になった場合、眼が冴えてしまい睡眠の質を低下させることがあります。 |
4.睡眠環境 | |
寝具や枕の変化や部屋の明るさ・温度や湿度など、環境要因が睡眠を妨げることがあります。 |
5.カフェイン摂取 | |
カフェインの覚醒効果から、摂取量やタイミングによっては睡眠に悪影響を与えることがあります。 |
6.身体的な不快感 | |
高血圧や心臓病、糖尿病、アレルギー疾患などの病気、呼吸障害などが睡眠を妨げることがあります。 |
7.薬物やアルコールの影響 | |
一部の薬物やアルコールは睡眠の質を悪化させることがあります。 |
これらの原因により睡眠の質や量が低下し、不眠症や他の睡眠障害が引き起こされることがあります。睡眠障害を改善するためには、原因を特定して適切な対策を取ることが重要です。
▼ 不眠症の4つの症状
入眠障害
一般的に健康な人が消灯してから入眠するまでの時間は、30分以内と言われております。入眠時間はあくまで目安ではありますが、本人が苦痛や支障を感じている場合は、不眠症の症状と診断されることがあります。
不眠症の訴えのなかでは最も多く、不安や緊張が強い時に起こりやすいと言われております。
中途覚醒
一般的に暑い夏場や冬の寒さ、騒音などによる環境が原因で起きてしまうことはありますが、環境に特別な変化もなく何度も目が覚めてしまい、精神的苦痛や睡眠不足を感じるようになる場合は、不眠症の症状として扱われることがあります。
早朝覚醒
年齢の影響で目覚めが早くなることはありますが、身体が疲れているにもかかわらず入眠できない、または入眠できても熟睡できない場合は、不眠症の症状と診断されることがあります。
早朝覚醒はうつ病で認められることが多いため、精神症状を確認する必要があります。
熟眠障害
熟眠障害は目覚めたときに睡眠不足を感じる状態になります。睡眠の中断や浅い場合に起こりやすく、疲れが取れない、寝た気がしないなどの感覚に襲われます。
眠りの要素には、時間と質の2つがありますが、本当に必要なのは時間よりも質の方だと言われております。
▼ 不眠症(睡眠障害)の疑いがあるときはどこに相談すればいい?
一般的には精神科・心療内科・内科・神経内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科のいずれかの場合に該当しますが、睡眠医学と呼ばれる睡眠障害の診断と治療を専門とする医学の専門分野もあります。
症状が不眠のみの場合は、一般の内科に相談してみると良いでしょう。内科では内臓疾患を扱う臨床医学になりますが、総合的に判断することができ、他の診療科で診察を受けるべきと判断した場合は、専門の診療科を紹介してくれます。
症状が不眠に加えて気分が落ち込んでいる場合は、精神科に相談してみると良いでしょう。強いストレスや気力が出てこないなどで身体にも負担がかかっている場合は、心療内科を受診することも視野に入れましょう。
睡眠時無呼吸症候群をはじめ、呼吸に関する症状がある場合は、呼吸器内科や耳鼻咽喉科に相談してみると良いでしょう。その他、持病やアレルギーなどの痛みや痒みなどで睡眠が阻害される場合は、かかりつけの各診療科に相談するようにしましょう。
内科や他の診療科で使用されている薬の中には、不眠が副作用として挙げられているものがあるため、薬の服用時期と不眠が重なることがあります。個人差はありますが、薬を飲み始めて明らかに不眠の症状が出たと感じる場合には、担当医師に相談するようにしましょう。
▼ 不眠を解消する方法
個人の生活リズムにより当てはまらない場合がありますが、一般的な不眠を解消する方法は以下の通りです。
1.体内時計を整える
不眠を解消する方法で最も大事なのは朝です。毎朝一定の時刻に起きて、カーテンを開けて太陽の光を浴びることで1日の周期をリズム化して体内時計をリセットします。夜には自然に眠る準備が始まるため、朝の光で体内時計を整えることが寝つきの安定につながります。
2.副交感神経を優位にさせる
寝る前は気持ちを落ち着かせ、リラックスさせることが大切です。自律神経は、体が活動しているときや緊張したときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経があります。リラックスした状態になると血圧や脈拍数が下がり、眠りにつきやすくなります。
また38~41℃程度のお湯に浸かることでも副交感神経を優位な状態に向かわせることができます。
3.運動をする
運動は身体の深部体温を高めます。そのため寝る時間の3~5時間前に当たる夕方の運動は、深部体温が上がり寝る頃には不眠が改善すると言われております。運動は体内時計のリズムを整えることにもつながるため、朝起きるのが苦手な方は、午前中に運動することでリズムが整いやすくなります。
4.寝具を見直す
快適に睡眠を取るための道具として寝具があります。寝返り・発汗・体温低下など、睡眠中の生理的変化を妨げない寝具を選ぶことが大切です。寝具には枕をはじめ、マットレスやシーツ、掛布団など様々あります。形や大きさ、素材など自分が一番リラックスできるものを選ぶことが重要です。
5.認知行動療法を試す
睡眠習慣を改善する治療法として、認知行動療法と呼ばれる方法があります。認知行動療法とは、寝付けないことへの思い込みや睡眠に対する恐怖を正していくことです。認知行動療法には個人差があるため、精神科の専門医に相談してみることをおすすめします。
※薬物療法に関しては依存性が出やすいため、専門医相談のもと行うようにしましょう。
▼ まとめ
近年では睡眠アドバイザーと呼ばれる方が増えており、睡眠学・栄養学・生理学・心理学など広い視野に立って、心と身体の健康をサポートします。睡眠アドバイザーは、睡眠改善のインストラクターとして睡眠コンサルタントの仕事や寝具を扱う企業でのアドバイザーやマーケティング業務などに携わる方が多いようです。
不眠症(睡眠障害)の疑いがあるときは、原因を特定し適切な対策を取ることが重要です。そのためにも専門医または医療機関に相談するようにしましょう。