ある臓器に動脈の血がいきわたらないことでおこる病気を虚血性疾患といい、心筋梗塞や脳梗塞がその代表です。大腸の動脈がふさがっておきる「腸梗塞」が虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)です。
大腸に栄養を送る血管の血流が不足すると、腸管が虚血となり、粘膜の浮腫、出血、潰瘍などが出現します。血流が減少する原因は、もともと血管に動脈硬化性の変化があるところに、便秘による腸管内圧の上昇などが加わるためと考えられています。高齢者や、糖尿病・膠原病(こうげんびょう)・血管炎などを基礎疾患としてもつ場合に多くみられます。 大腸は主に上腸間膜(じょうちょうかんまく)動脈と下腸間膜(かちょうかんまく)動脈から血液を受けていますが、大腸脾弯曲部(ひわんきょくぶ)から下行結腸は、上腸間膜動脈と下腸間膜動脈の支配領域の境界部分であるため虚血に弱く、構造的に虚血性大腸炎が生じやすくなっています。腸間膜動脈が完全に閉塞し血流が途絶えた場合を腸間膜動脈閉塞症といい、虚血性大腸炎よりもさらに重い病態です。
典型的な症状は、急に強い腹痛(多くは左下腹部痛)が起こります。冷や汗や悪心(おしん:吐き気)、嘔吐を認めることもあります。その後、便意を催しトイレにいき下痢を数回しますが、だんだん血性の下痢になってきます。 似たような症状を起こす病気に薬物性腸炎、感染性腸炎、大腸憩室炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などがあり、これらの病気を除外する必要があります。