群発頭痛は眼周囲〜前頭部、側頭部にかけての激しい頭痛が数週から数ヵ月の期間群発することが特徴です。夜間、睡眠中に頭痛発作がおこりやすく、頭痛発作時には眼の充血や流涙、縮瞳と眼瞼下垂(まぶたが下がること)などの症状を伴うことが多いのも特徴です。
群発頭痛は、頭痛発作が群発することが頭痛名の由来ですが、現在では頭痛の性状と随伴症状に主眼がおかれていて、寛解期(頭痛がまったくおこらない時期)のないものを慢性群発頭痛といいます。
群発頭痛の発生率は人口10万人当たり9.8人と比較的少なく、一般の方は勿論のこと医師の間でもあまり認知されていないタイプの頭痛です。激しい頭痛発作で複数の病院を受診されてもはっきりと診断してもらえないことがあるようです。多くの群発頭痛患者さんは、正確な診断を受けるまでに数年以上の年月がかかっていると言われています。群発頭痛の知識を持っている医師は比較的容易に診断ができますので、類似の頭痛をおもちのかたは神経内科専門医を受診してください。
群発頭痛は20〜30才代に多く約85%は男性とされていたのですが、最近の欧米の調査では男女差が縮小してきて女性の群発頭痛も稀ではなくなっているとされています。1回の頭痛発作は15分〜180分続き、2日に1回〜1日8回(大部分は1日に1〜3回)の頻度でおこります。
群発頭痛の治療に際しては、まず患者さん御自身が群発頭痛について知識を得て理解すること(つまりは医療側からは十分な患者教育を実施すること)、頭痛発作時の対症療法と予防療法をうまく組み合わせて行うことが重要です。
頭痛発作時の治療としては酸素吸入(マスクで純酸素7-10L/分、15分間)、スマトリプタンの皮下注射が効果的です。群発頭痛の発作に通常の鎮痛剤は無効です。酒石酸エルゴタミンも頭痛発作が起こってから使用してもほとんど効果がありません。
群発期には予防療法が必須です。頭痛発作はほとんど毎日繰り返し起こり、1回の頭痛発作は比較的短時間であるため、頓挫薬のみでは十分な治療が困難だからです。
群発期初期の予防療法にはエルゴタミン、ステロイドが用いられています。睡眠中に頭痛がおこる場合には酒石酸エルゴタミンの眠前の内服が奏効します。ただしエルゴタミンとトリプタンは24時間以上の間隔をあけて使用する必要があるので注意が必要です。維持的予防療法としては保健の適応が未承認ですがベラパミルが最もよく使用されています。炭酸リチウムも有効とされていますが治療域が狭い薬剤なので高用量を使用する場合には血中濃度をモニターしておく必要があります。