2019年に厚生労働省が調査をまとめた「国民健康・栄養調査」では、20歳以上の人の肥満率は男性33.0%、女性22.3%となっております。肥満だからと言って必ずしも高血圧症であるとは言えませんが、肥満と診断されていない人と比べると、2~3倍高血圧症になる確率が高くなる結果が出ております。
ここでは、肥満者が高血圧症になりやすい理由を説明しています。
- なぜ肥満者は血圧が高いのか?
∟ 血圧が高くなる理由
∟ 体重と血圧は関係する?
∟ 血圧の正常値とは? - 高血圧症が引き起こす病気
∟ 脳血管障害
∟ 各種心臓病
∟ 腎臓病
∟ 網膜
∟ その他動脈系疾患 - 肥満を改善しよう
- まとめ
▼ なぜ肥満者は血圧が高いのか?
血圧が高くなる理由
遺伝が理由で血圧が高めな方もおりますが、一般的に血圧が高くなる原因は、肥満によるもの、過剰な塩分の摂取、ストレスや喫煙などが挙げられます。
肥満と診断されていない人でも血圧が高くなることはありますし、腎臓病など特定の原因により、若年層の高血圧も少なくありません。
血圧は心臓がポンプのように血液を動脈に送り出すときにかかる圧力のことで、この圧力が正常値よりも常に高くなってしまうことを高血圧症と言います。この血液の通る動脈が狭かったり、血液濃度が高くて流れにくかったりすることで血圧は高くなります。
体重と血圧は関係する?
血液は全身をくまなく行き渡らせているため、とても強い圧力を必要とします。体が大きく体重が重い場合は、より強い圧力が必要となりますが、動脈や血液の状態が良好であれば、血圧に影響されることは少ないと言われております。
体重が重い場合に注意すべきポイントは内臓脂肪です。内臓脂肪が増えると体重に関係なく血圧が高くなることがわかってきました。
血圧の正常値とは?
一般的に正常血圧と言われているのが、家庭での測定で115/75mmHg以下です。診察室での測定では、120/80mmHg以下とされております。
家庭血圧は、診療室血圧に比べて収縮期、拡張期ともに5mmHg程度低く設定されております。これは計測する環境の違いで測定結果に差が生まれることを考えての設定となっております。
正常血圧と高血圧の間は、将来的に高血圧になりやすいと言われております。
▼ 高血圧症が引き起こす病気
脳血管障害
高血圧症が続くと動脈硬化が進行するため、徐々に脳の血管が詰まって脳梗塞になります。深刻な高血圧症では、脳の血管が破れて脳出血を発症したり、血管の一部分に動脈瘤ができてくも膜下出血を引き起こしたりします。
各種心臓病
高血圧症は血液の流れている部分全てに影響を及ぼす恐れがあります。心臓付近で動脈硬化が起きた場合は、心臓のポンプ機能が低下してしまい、心不全を起こすようになります。
また血液循環が悪くなることから、心筋が厚くなり心臓肥大となり動悸や息切れなどの症状が起こりやすくなります。
腎臓病
腎機能が正常の60%以下または、たんぱく尿が出るなどの腎障害が継続してしまう慢性腎臓病は、高血圧と深い関係にあります。
腎臓は、体内で血圧を調節する役割を担っているため、塩分を摂りすぎると腎機能の低下につながり、血圧の調節がうまく行かず動脈硬化を引き起こすことがあります。
網膜
高血圧症の場合は、網膜の血管状態にも影響されることがあります。血管が詰まり、眼底出血を起こして視力低下や飛蚊症が発症する場合は、高血圧や動脈硬化などの可能性があります。
網膜の動脈と静脈は、網の目のように張り巡らされて交差しているため、高血圧により血管が狭くなる場合は、重篤な眼底出血を起こすことがあります。
その他動脈系疾患
高血圧は動脈硬化の最大の危険因子です。血液循環がうまく働かなくなると様々な病気を引き起こしてしまいます。日常よく起こる頭痛やめまいなどは、軽度の高血圧症の可能性もあります。
血圧が高いだけでは自覚症状がほとんどなく普段の生活に支障がないと感じてしまいます。血圧が高めな人は、こまめに血圧測定を行い数値に変化が見られた場合は、内科医もしくは循環器内科に相談すると良いでしょう。
▼ 肥満を改善しよう
肥満は高血圧症になりやすいと言われております。特に内臓脂肪の蓄積は血圧に大きな影響を与えます。
ご自身の肥満度は身長と体重から計算される数値(BMI)でわかります。今では体重計に乗るだけで様々な数値を測定することができます。
肥満を改善するには、食事療法と運動療法が効果的です。
食事では過食と塩分の過剰摂取が原因であることが多く、生活習慣の見直しが必要です。減塩であれば1日6g未満を目安に、オメガ3脂肪酸のEPAやDHAを積極的に摂り入れると良いでしょう。DHAには代謝の促進や脂肪燃焼を高める作用があります。
運動療法は血管内皮機能を改善し、降圧効果が得られ、高血圧症を改善すると言われております。
▼ まとめ
血圧の上昇は、過剰に分泌されたインスリンの働きにより、血液中のナトリウムが増加し、薄めるために血管内に水分が流動するため、全体の血液量増加につながります。
またインスリンの働きは交感神経系を刺激することで、血中にカテコールアミンが放出され、末梢血管を収縮させてしまうため、血圧の上昇につながります。
他にも内臓脂肪増加に伴い、脂肪細胞から分泌されるアンギオテンシノーゲンという物質が血管を収縮してしまい、血圧の上昇へとつながります。
肥満者=高血圧症とは断定できませんが、様々な要因から高血圧症になる可能性は高いため、肥満と診断された方は計画的に改善していくようにしましょう。
【参考サイト】